自然酵房 麦笑は、2015年11月に奈良県吉野郡の山あいで開業しました。ここは自然に囲まれた環境で朝夕の澄んだ空、吉野特有のキレイな水が特徴の田舎です。そんなキレイな空気とおいしい水が豊富な場所で自然に手を貸してもらいながら自然の酵母を育てようと思いました。
酵母を元気に育てることによって、産み出される「おいしいパン」これこそが私達の作りたかった身体にも心にも優しいパンです。
この奈良県の吉野は水がキレイなことで知られている場所です。当然ながら昔から土を汚染する工場や大きな田畑もなく、周りは木々が豊かに生い茂る山々だけです。そんな山々に降り注いだ雨水は、自然豊かな地中に染み込み濾過されて川に流れ出ているため、水の質も良いものになっていきます。
またお店のすぐ近くには水一切を司る神様である、御祭神「罔象女神(みづはのめのかみ)が祭られている丹生川上神社があります。罔象女神は、水利の神として、または雨の神として信仰され、五穀の豊穣に特に旱続きには降雨を、長雨の時には止雨を祈るなど、第四十代天武天皇白鳳四年の時代から現在に至るまで、ことあるごとに心からなる朝野の信仰を捧げられてきたそうです。今でも、水に関わるお仕事をされている企業(電力会社、都市の水道関係)から信仰されているようです。そういった歴史が空気も水もキレイであり続けた理由ではないかと思います。
自然酵房 麦笑は、夫婦二人で営業をしています。今のところ週末しか営業していません。
その理由は、自家製の自然酵母(天然酵母)を育てるのに約一ヶ月かかることと、育てた自然酵母(天然酵母)が人と同じく気候の変化や季節の変わり目などにバランスを崩しやすく、維持管理していくのにもとても手間と時間がかかるからです。
また、パン自体の発酵もゆっくりじっくり発酵させています。
その手間と時間をかけたパンが私たちの作りたい”麦笑の味のパン”です。私たちは、身体にも心にも優しいパン作りを目指しています。だからといって「良いもの」=「高いもの」になっては、意味がありません。そのために小さいお店で自分たちのできる範囲で営業しています。お客様の対応にお時間をいただくことが多いかもしれませんが、小さいお店だからこそできる丁寧な対応を心がけています。
店舗は、築300年はあると言われている古民家を自分たちや仲間の手でリノベーションしました。
皆様にゆっくりパンを味わっていただくために、店舗とイートインカフェがある母屋には吉野のヒノキと杉を使い、壁も漆喰や珪藻土のみでリフォームしています。吉野ならでは、また手作りならではの、都会では感じられない味と時間をお楽しみいただければと思っています。
現在、麦笑のパン作りに使っている小麦粉は主に熊本県産限定の小麦粉を使っています。詳しくは小麦粉へのこだわりをご覧ください。
ゆくゆくは麦笑の仲間や地元の農家さんに小麦を栽培していただき、私たちがそれを消費し、パンを食べてもらう。そういった消費の循環の輪を作ろうとしています。
小麦栽培からパンを焼くまで、全部自分たちだけですることも考えたのですが、それぞれ仲間やみんなが楽しく暮らしていけるため、小麦や野菜作りはそれぞれの専門家に任せ、私たちは、それらをありがたく用いパンを美味しく作るということに全力を向けたいと思いました。
喜びを共有し循環を作る。それが私たちのここで仕事をする役割ではないかと思っています。